トランプ関税は自国アメリカを弱体化する

 トランプ大統領は中国のみならず同盟国や隣国であるカナダ・メキシコ・日本・EUなどへも関税を拡張した。日本にとっては鉄鋼が適用される。最大の問題は自動車であるが、これも避けられないであろう。アメリカが世界の国々から輸出対象となっていることも、貿易赤字国であることも事実だ。逆にいえば、アメリカには世界の国にとって魅力のある商品が少ないことを示している。中国のようなダンピング的搾取生産による低価格はあるが、アメリカは自国で低価格の製品を生産できない。一見派手に見えるGAFAMなどを中心とするIT関連はアメリカ財政には反映されず、企業の腹を肥やしているに過ぎない。
 アメリカの経済的問題の最たることは、工業産業生産力の衰退だ。そのことはトランプもよく理解しているし、その再起に夢を描いている。産業の国内回帰を願って考えたことが関税である。輸入を押さえて国内生産を回帰させたいことは、誰でもわかる。特に製造業には生産力を付けるまでには数年以上の歳月が必要だ。アメリカにその余裕があるのであろうか。崩壊寸前のUSスチールに対する姿勢や鉄鋼関税など、自国産業を育成する感覚が疑われる。
 今はアメリカ国民は対外的に、カナダの属州化・グリーンランド買収・ウクライナ和平調停・ガザ停戦などリーダーシップを発揮していることに支持を示している。不法移民対策ではメンタル面では支持を得ている。トランプにとって最大の問題は経済復活であり、インフレ対策だ。国内生産が国民の要求に対応していない構造に、関税で物価が上昇すれば国民の生活は苦しくなることは間違いない。今のアメリカ人に苦境に耐えうる体質があるのであろうか。アメリカは建国以来最大の苦境に突入しようとしている。

高校の授業料無償化は地方の教育現場を喪失させ、過疎化を加速する

 少子化をくい止めるためには、子どもの優遇策を示すことは大切だ。その一環として授業料の無償化が議論されている。幼稚園から中学までは、子どもが家庭の範囲に留まることことから、その影響は全国一律・平等に考えられるし、家庭の経済的負担を緩和する。高校や大学となると生徒・学生は家から移動する。その理由は本人の能力を基準に考えることもあるが、経済的理由で公立と私立を考える。授業料が無償になると経済的理由がなくなる。その意味では教育の自由化が進んで、教育の観点で学校の選択が促進される。
 日本の将来を考えるとき、少子化と地方の疲弊が問題となる。授業料が無償になると私立への進学が増える半面、公立への進学は減少する。問題は各地方において、私立学校はその地方の都会に偏在していることである。当然、経済面が同じであれば、生徒数の多い都会の学校を望む。山間・漁村の公立学校に進学する生徒は激減する。そして少子化は廃校を促進する。ますます、課題である地方創成を打ち砕く。都会の独り勝ちとなり、教育の質を提供する云々の話どころでは無くなる。
 目先の正義ぶった政策で考えると、真の将来を誤らせる。子供に対する支援は必要なことであるが、国土を分断する世の中も考えなくてはならない。

帝国主義の時代に逆戻り

 19世紀後半は帝国主義の時代をひた走った。イギリス・フランス・ドイツ・ロシアなどのヨーロッパの国々が中心であったが、遅まきながらも唯一日本が追従した。帝国とは多民族を統治する政治体制と言える。当時のアメリカはモンロー主義の名残もあったが、地勢的にも国内の統治的にも侵略するには無理があった。その中で当時の大国であった前記4国はアジア・アフリカの分割に専念した。
 現在は、ロシアが露骨に牙を剥いてウクライナを侵略し、成功の暁には旧ソ連国に目を向けている。さらにイラン経由でのアフリカ進出を念頭に置いている。中国は中央アジアに進出したいところだがロシアとの関係で無理があるので、東南アジア・太平洋にさらにアフリカへと実績を上げている。アメリカは伝統的にロシアや中国のような侵略ではなく、影響力で各地に進出してきたが目立った動きはなかった。しかし、トランプ大統領になって、パナマ運河・グリーンランド・ウクライナ鉱物資源・南アフリカなどへの干渉など、他国を標的にしたアメリカ第一主義を打ち出した。他国に関与しないモンロー主義とは違う。
 ロシアは武力行使、中国は経済進出が強いが、アメリカは何を武器にするのであろうか。これまでは金融政策で世界を制してきたが、いつまでもそれはできないであろう。等しくいえることは3国とも、国内苦境を抱えていることだ。ロシアは経済低迷に加えて、政情不安定。中国は経済低迷と国民の窮乏。アメリカは国内混乱と産業の劣化。
 いずれにしても為政者は政治に苦労する状態だ。昔の帝国主義は〝great〟を目指す意識が強かったが、現在は〝国民を意識したポピュリズム〟に巻き込まれての帝国主義に突き進んでいる。

トランプは火事場泥棒をすべきではない

 ウクライナ和平についてトランプとプーチンが会談をするための高官交渉が行われている。和平交渉は歓迎すべきだが、当事者であるウクライナが除外されていることは問題だ。またウクライナ支援のアメリカとともに中心となってきた欧州(NATO)が参加していない。トランプはゼレンスキー大統領の支持率が4%しかない状況をもって大統領選をすべきと言っているが、実態は半数の支持率を保っている。プーチンの偽情報にアメリカが翻弄されているようで、情けない。
 この仲介に仲介者の利益が優先されていることは問題だ。トランプはウクライナのレアアースの利権を求めている。レアアースの中国への依存を解決することは良しとすべきだが、この段階で主目的にすることはいかにも醜い。かねてからトランプはアメリカ第一を謳っていたが、真にそうであるのであれば、過去のモンロー主義に浸ればよい。和平の仲介などやめてアメリカ国の政治に集中すればよい。
 トランプは強い大統領と思っていたが、意外と脆い人物に見えてきた。政治家プーチンの前では赤子のようにも見えてくる。ゼレンスキーを独裁者呼ばわりをしているが、実態の独裁者はトランプだ。故に独裁者プーチンに翻弄され、さらには尊敬の念を抱いている。政治をすることよりは独裁をすることに思いをはせている。習近平に一目置いたり、金正恩を許したりはその独裁手法に価値を見出している。独裁的経営で、財を成してきたイーロン・マスクの起用なども政治を踏まない政治にとって便利が故の物だ。
 ウクライナにレアアースを要求することは、まさに子供のわがままを思い出させる。火事場泥棒の発想が起きるのも独裁者なればの発想だ。アメリカは今一度熟考しなくてはならない。このようなアメリカにした世界の国々(特にグローバルサウス)は、自国の将来に危機感を持たなくてはならない。

第二のシャープにならぬよう……過去の技術に捕らわれた日産自動車

 昨年末、ホンダと日産が統合する発表があった。持ち株会社の元に両社が独自性を持ってぶら下がる案であった。その後、ホンダが日産を子会社にする表明をした。両社は高度成長期に販売のトヨタと違って、技術を前面に謳って業績を上げてきた。最初の合併を聞いた時、技術屋同士の難しさを感じていた。それだけにお互いを活かした独立性を持った、持ち株会社の元での形式を考えたのであろう。
 同じ様に技術を謳う三菱自動車は、当初から両社に加わらないと表明した。結局、ホンダと日産は統合を解消した。一方、トヨタはダイハツやスバル、マツダなどと緩やかな統合をしている。そして現段階では、グループとして世界最大の自動車王国を築いている。過去自動車は〝技術〟の集約としての商品を作り上げた。その過去と違うのは、もはや自動車は工業的技術の集約ではなくなりつつあることだ。差別化の力点はITなどのソフトの集約の統合アミューズメント商品に移行している。だから工業的三流のテスラやBYDがEV分野で短期間にシェアを拡大できたのだ。
 ホンダはともかく、日産、三菱自動車は自動車の将来を考えるとき、経営体質が過去のものだ。日産と三菱が組んでもどうにもならない。両社はホンダが嫌ならトヨタグループの工場になるしか生き残る道はない。頭を技術から商品に切り替えるしかない。在りもしないプライドを捨ててホンダと歩むしか生き残れない。
過去、液晶などの技術で一世を風靡したシャープであったが、商品感覚を失って経営危機に陥り、台湾の鴻海に買収された。日産は過去、経営難からルノー(カルロス・ゴーン)に実質支配された。その教訓は全く生かされていない。今度は鴻海に支配されるつもりであろうか。電器業界の鴻海が、自動車産業に参入できるのが今の世界であることに気づかなくてはならない。

少子化問題--[17]性の多様性には代償が必要

 アメリカのトランプ大統領が就任演説で、「男は男で、女は女であるべき」と多様性の行き過ぎに疑念を呈した。タイでは同性婚が法的に認められた。アメリカの合計特殊出生率は1.67、タイは1.32である。合計特殊出生率が2を切ると人口の減少が始まる。アメリカは不法移民の侵入を禁止の方向であるが急激な人口減少にはならない。タイは近年、経済成長し豊かにはなったが先進国に比べると、未だである。1.32の数字は今後の成長を考えるとき、不安が待っている。日本の合計特殊出生率は1.26である。この数字は少子高齢化の時代を表している。タイを考えるとき、「人口ボーナス」を教授はしていないが、日本は享受した。その成果の余韻は味わってきた。
 性の多様性を求める人は、自由・平等を尊重する。基本的人権を考えると男女婚・同性婚は自由であると考える。同時に社会が成り立つには、自由・平等の代償として義務が必要だ。人間の性に対する義務とは何であろうか。生物は子孫を残して、繁栄を持続する努力義務がある。国際的にはさなざまの置かれている実情がある。アフリカやアラブ諸国の多くは合計特殊出生率が3以上の国が多くある。これらの国はそれを避けないと「人口ボーナス」を享受するどころか、貧困・格差の苦難を味わう。
 先進国の多くは少子高齢化になっている。つまり子供が増えないと、これまでのような国力を維持できない。同性婚・未婚は子供を設けないことを表す。自由・平等を旗印とする性の多様化は、人口を抑制しなくてはならない国と人口を増加させたい国とでは、方向が違うのは明瞭である。
 日本でも最近は左派勢力を中心に、性の多様化が叫ばれている。女性に男と同じ役割や権限を与えることに異存はない。しかし将来を考えると、少子化は間違いなく日本を沈没させる。国民には今の幸せを考えると同時に、将来のために考えることが義務である。自分のことにしか投資しない人に対しては、将来の人のために投資を求めなくては社会が維持できない。自分の老後を社会に求める人生になることは明らかである。そうであるなら、子孫を残さない人は働ける時代に社会に貯蓄し、老後の社会の負担を軽減する必要がある。平たく言えば、子孫を残さないのであれば、税金で残す必要性だ。未婚・同性婚を求めるのであれば、老後の代償に現役時代に賦課を背負うこと覚悟をしないと社会的には不平等と言える。

メディアの実態……[19]普遍化できない粗末な組織

 フジテレビの社員がタレント中居正広に女性を斡旋したとの文春の報道で、またしてもメディアの醜態が暴露された。事態の発端から1年以上もして経過して、自己組織ではなく株主のファンドの指摘があるまで事態は葬られたままであった。趣味の違いと言えばそれまでだが、面白くもおかしくもない彼の番組が六つもあったと聞き、テレビの価値観に対する鈍感さと無能さが覗える。
 過去、旧ジャニーズの性加害問題で芸能事務所とメディアの癒着が問題になった。結局、メディアはただ単にジャニーズとだけの問題としかとらえられなく、モラル普遍の問題としてはとらえることが出来なかった体質が露呈した。メディアに求められるものの一つ倫理が欠落している。同時に自己を見つめ検証する姿勢の自浄能力が欠けている。はたしてフジテレビは株主のファンドの要求ではなく、一般の声であったら反応したであろうか。フジ以外のテレビは、視聴者受けの好材料として勇んで報道しているが、自分も同類であることを理解しているのであろうか。
 人(会社)の能力は応用力が有るか否かで真価が評価される。直接的なことに対処できるだけでは進歩はない。問題の関連から広く視線を変えて、他の問題をとらえることが視野を広げ進歩に通じる。理屈では分かっていながら、実行できないのが今のメディアだ。既に起きていることであるが、視聴者に見放され、挙句の果てにはスポンサーから見放される。視聴者やスポンサーは、SNS以外は他に方法がないからテレビを利用しているに過ぎない時代になっていることを自覚しなくてはならない。

アメリカ・トランプ大統領スタート……〝常識の革命〟

 トランプ政権が発足した。一言で言うならアメリカンファースト(アメリカ第一主義)だが、端的言えば「なりふり構ず」の政権だ。項目的に列挙すると次のように述べた。
①不法移民の禁止・送還
②関税賦課・外国歳入庁設置
③石油採掘とEV義務化の撤回(グリーン・ディール撤回)
④インフレからの脱却
⑤パナマ運河の返還
⑥ウクライナ停戦
⑦多様性への反対(性別の堅守)

①不法移民の禁止・送還
 非常事態宣言を出し、かなり強硬に実施するであろう。移民者が白人の雇用を奪っていることへの対応策。半面、過ぎると3K労働者の不足と賃金の停滞を招く。
②関税賦課・外国歳入庁
 カナダ・メキシコからの輸入に25%の関税を課す。中国へ10%の追加関税を骨子とするが、カナダ・メキシコに工場を作りそこから輸出している中国への対策が主な狙いだ。副作用として物価の上昇を招くのだが。
③石油採掘とEV義務化の撤回(グリーン・ディール撤回)
 アメリカは世界一の石油資源国だ。内需が賄え、輸出もできることは絶大な武器だ。中国に後れを取った自動車業界は、EV化することによってますます劣勢に陥っている。最大のライバル中国に対抗するには自然の発想だろう。日本にとっては、息継ぎの好機だ。
④インフレからの脱却
 アメリカは構造的に輸入大国だ。インフレになり易い構造であるが、最大の敵は関税であろう。現在でも課している関税を、さらに課すことはもろ刃の刃だ。関税で困るのは表面的には相手国だが、実質は国民である。関税を上げて、インフレを抑制できる経済はあるのであろうか。
⑤パナマ運河の返還
 パナマ運河は、アメリカが開削した。それをパナマに譲渡した。それを再び、戻せと言うのは居丈高で不条理なことではある。ここでも中国の影が影響している。運河の運営主体は両岸で中国の企業であるからだ。
⑥ウクライナ停戦
 トランプの行う停戦は、ウクライナの不利な条件で終わるであろう。ウクライナの問題はヨーロッパで責任を持って欲しいからだ。ヨーロッパのNATO諸国には軍事費をもっと拠出して欲しいわけだ。現状では武器の大半をアメリカに依存しているから、アメリカ軍需産業は潤う。日本へも軍事費増を迫ってくるだろうが、国際情勢からして軍事費の強化は必須であるから、人に押されないと動かない日本人にはよい機会かも。
⑦多様性への反対(姓別の堅守)
 昨今の左派勢力はLGPTQのように性の多様化を求めている。人権の自由などを考えると、もっともなところであるが、そのような社会は保守層を中心に反対も多い。多様化が進むほど、現実は右派勢力が台頭してくる。端的に言えば第二次大戦前の状態に社会が近づくことだ。ヨーロッパの性問題の動向は適切に把握して、間違った方向へ舵を切ると危険だ。

 トランプは就任早々、パリ協定離脱・WHO脱退の大統領令に署名した。世界広しといえども自国のみで国を動かせるのはアメリカしかない。自国第一主義に陥る考えも滑稽とだけとは言えない。近年の世界は、アメリカの横暴ばかりを責め、大国の責任を果たしていないと非難してきた。しかし、言うほど横暴でもないし、責任を持たなかったわけでは無い。中国やロシアに比べれば。アメリカが世界の国々に嫌気がさすのも頷ける。
 トランプの代名詞は〝ディールに基ずく政治〟だ。石破総理、かしこまった正義の政治家では相手にされないですよ。政治資金問題に1年以上費やすような政治家では、トランプどろか世界の為政者にも手玉に取られますよ。政治は綺麗にやるものではなく、国民の幸福を満たすことです。あの犯罪者・田中角栄は許せない悪を犯したが、今の日本国民の幸せの礎を築いた。

 

ユーラシア・グループの「ことしの十大リスク」

 今年もイアン・ブレマーのユーラシアグループが「ことしの十大リスク」を発表した。
①深まるGゼロ世界の混迷
②トランプの支配
③米中決裂
④トランプのミクス
⑤ならず者国家のままのロシア
⑥追い詰められたイラン
⑦世界経済への負の押し付け
⑧制御不能なAI
⑨統治なき領域の拡大
⑩アメリカとメキシコの対立
 アメリカ第一主義とトランプ個人の影響が最大のリスクとなっている。また大国の脆弱化と無責任により世界の混迷が深まる。利便なAIもモラルが求められる。

 ちなみに2024年の「十大リスク」は下記の通り。
①アメリカの分断
②瀬戸際の中東
③ウクライナの事実上の割譲
④AIのガバナンス欠如
⑤ならず者国家の枢軸
⑥回復しない中国
⑦重要鉱物をめぐる争奪戦
⑧インフレによる経済的逆風
⑨エルニーニョ現象の再来
⑩分断化進む米でビジネス展開の企業リスク
であったが、ことごとく好転していない。
 日本は政治的混迷を含めて、正念場の年になるであろう。

民主主義の決断の遅さに備えなくてはならない

 民主主義の根幹は国民の自由と平等を支えるものである。しかし今の世界はそれを揺るがす情勢だ。以前は資本主義と共産主義の確執で世界はある意味均衡を保ってきた。現在は民主主義と権威主義の確執の時代となった。中国・ロシアなどは権威主義の典型だ。では民主主義の典型はどの国なのだろうか。アメリカか、イギリスか、日本か?
 確かなことは民主主義の小国は、権威主義の大国には勝てない。それを認めない人は今(将来)の世界が見えていない。言葉を換えれば〝平和ボケ〟している。その人たちは本来、純真で正しい人である。しかし、人間世界はその原理で動いていない。直近のウクライナやパレスチナ問題がそれを証明している。〝パックス……〟と言うのは世界史の中のつかの間の平和でしかない。この100年の間に世界は2度の大戦を現に行っているし、小競り合いは山ほど行われた。世界は侵略と反発の歴史を繰り返してきた。それは民族間の戦いのみならず、同じ民族間でも争ってきた。
 自国を守るためには、最低限その能力を保持しなくてはならない。言葉に換えれば軍事力・経済力・外交力などである。それらが一つだけでは国の力にはならない。侵略を考える国に対しては、それに対して防衛する力が必要だ。侵略を考えるのと国を防衛するとの二択だ。侵略どうしでの攻防は戦争だ。防衛どうしでの攻防は冷戦だ。戦争はするべきではない。冷戦もするべきではないが、人間という動物は戦いを避けられないことは歴史と生物学が示している。世界は戦争に至らない冷戦の段階で耐えなければならない。その消極的な冷戦段階で支えるのが防衛力・経済力・同盟力だ。
 世界は軍事的大国がことごとく権威主義的思考に傾いている。中国・ロシアのみならず、アメリカまでもその仲間入りをしようとしている。いまや政治的決断は即断即決を迫られる時代となった。それを容易にする権威主義に対して、民意→議会→政治のサイクルを繰り返す民主主義制度は目のくらむような時間を要する。しかし日本は民主主義を捨ててはならない。そのためには国力を養わなくてはならないし(抑止力)、政治のスムーズなシステムが必要だ。〝井の中の政治〟をいつまでも続けてはならない。