大学授業料と教育の実態

 東京大学が授業料を10万円程度値上げしたい意向を示した。10万円は国が示している大学独自にゆだねられた上限の20%に相当する。教育の充実を図るとのことだ。東大と言えば日本でナンバーワンの大学だ。しかし世界の於いては30位程度に下落している。授業料が値上がりしたことによる学生減は無いであるう。それで充実するのであれば、値上げすればよい。一時も早く、世界に輝く成果を上げてほしい。
 中央教育審議会の座長が「国立大学の授業料は今の3倍の150万円に値上げすべき」とほのめかした。彼の立場は首都圏の私立大学の長である。大学の長である者は学問は勿論、公私の違いや経済感覚や国の行く末考える頭を持ってほしい。地方の再生に苦労している地方大学にとって、国立大学は重要な存在だ。貧しいが向学心のある学生にとっても、唯一の希望だ。彼らの希望を砕いてはならない。そのために、全道府県に国立大学は設置されている。大学の将来を考えるのも大切だが、国の将来を考えることが中央教育審議会の大切な仕事だ。
 短大・専門学校を合わせて大学の進学率は、84%に及ぶ。数字だけを見れば世界に誇れるが、教育の実態を見ると、無駄な青春時代を送っていることでもある。少子化時代を迎え私立大学の将来は暗い。耳障りのよい〝公平〟がいまだに忘れられず、現実を考えられない大学がいつまでも存在すること自体が間違いだ。アメリカなどには授業料500万円前後の大学がざらにある。それでもその大学は狭き門だ。経営だけに汲々として、学問の充実を忘れている日本の大学は大激変の淘汰をされなくては存在意義がない。
 学生も親も、〝大卒〟の意味を、考え直す時期は数十年前に来ているはずなのに、今だ実行するに至っていない。子供を産み育て・自立に育てる連続的思考を放棄した逃げ腰の国に将来はない。