支離滅裂に陥った中国共産党

 中国の全人代が定年の延長を発表した。男性は55→58歳、女性は50→53,55歳である。労働力確保が主な理由と言うが、その割には60歳未満と言うのはずいぶん間延びしている。理解しておかなくてはならないことは、この延長は実質的には共産党員・公務員・国営企業社員を中心にしていることだ。つまり、大多数にあたる民間企業では、実態は適用できないものである。
 労働力不足を誇張しているが、不思議なことは失業率の高さである。若年労働者(16~24歳)の失業率は、昨年7月に21.3%になり、慌ててて学生などを除いての発表は約15%であった。しかし1年もたたない今年8月には17.1%となった。この労働力不足と失業率の高さは何を意味するのか。若年層と高齢層の雇用のミスマッチだけで、片づけられる問題ではない。失業率などの統計は都市部を中心に発表される。かつての好景気の時期の農村出稼ぎ労働者は、都市部での仕事に失業して故郷の農村に帰ってしまった。帰っても満足な仕事があるわけでもなく、半失業状態だ。この膨大な失業者は統計で発表されることはない。労働力不足どころか、有り余る求職者である。
 中国は世界に誇るハイテク先進国だ。AIやロボットを開発し、省力化し労働力不足に対応しようとしている。そして、世界的レベルで見れば成功し、華やかに見える。この技術を世界に輸出すれば国力は高まる可能性はある。その収入を持って社会保障の基盤にと考えることは、悪くはない。しかし、それは溢れかえる失業者や貧困層を救うにははるかに及ばない。それどころか国民の労働機会をますます奪ってしまう矛盾を抱えている。少子高齢化で労働力不足と言っているが、中国は人手余剰の社会だ。国内の労働市場と内需を生み出さない限り国は成り立たない。ところが「反スパイ法」などで、外国からの投資を勧誘しながら、実態は外資から敬遠されている。
ましてや、国防相・外務相・農業相が立て続けに解任されことにわかるように、中国共産党の一党独裁体制は、腐敗を改善するどころか、ますます増長するだけで、国民に回ってくる金は僅かしかない。それが独裁と言うものだ。
要するに習近平指導部は、問題を個々には認識するが、問題の本質を解決するための有機的システムを構築できない。独裁体制は、自分が生きている間の利益しか考えない、国民搾取の体制でしかない。