佐渡市で開催された、世界文化遺産「佐渡島の金山」の朝鮮半島出身者を含む労働者の追悼式に、韓国政府が政府代表の派遣を見送った。これは日本政府を代表して参列した生稲晃子外務政務官が、過去に靖国神社を参拝したことを問題視したためだという。韓国メディアが「根拠」としたのは、共同通信が2022年8月15日に配信した記事だった。「岸田政権発足後初の終戦の日で、靖国神社に参拝した国会議員は、自民党の生稲晃子参院議員ら20人超だった。共同通信社が取材で確認した」というものだ。だが当の生稲は「参拝していない」と否定しているし、事実参加していなかった。
靖国参拝をめぐっては、中国は戦後長らく、首相らの参拝を問題視することはなかった。極東国際軍事裁判でのA級戦犯14人が国家の犠牲者「昭和殉難者」として靖国神社に合祀されたのは1978年10月のことだったが、中国が突然、靖国参拝を批判したのは改革開放を掲げた鄧小平の7年後の1985年。韓国はこれに追随して批判を始めた。日本メディアが中国や韓国に〝ご注進〟し、日本政府が〝弱腰外交〟を繰り返したため、靖国参拝が中韓の「外交カード」となってしまった。
佐渡の追悼式に韓国が出席しようがすまいが、どうでもよいことだ。中国・韓国の戦前に対する問題は、前述のとおり日本のメディアが意図的に誤報したことだ。その典型は慰安婦問題における吉田書簡を検証することもなく、間違いを拡散し長い間日本を苦しめた朝日新聞だ。戦争犯罪を悪として正義を述べることはよいが、悪を蒸し返し歪曲し自国を貶めることは正義とは言えない。政府(組織)は責任を取らなくてはならないと言うが、今回の共同通信と加盟地方紙の謝罪と責任はどのように取るのであろうか。謝罪記事で済む問題ではない。