シリア・アサド政権の崩壊の次に来るもには

 シリアのアサド政権が、半月足らずの反政府勢力の攻勢によって崩壊した。過去十数年の紛争があっけなく終了した。当初は穏やかに見えたアサド政権は2011年の〝アラブの春〟によって、保身を図る暴力的強権政府に変貌した。それはイラン、ロシアの支援により増幅した。反政府勢力の主力はアルカイダ系ISであったが、トルコが支援し、アメリカはクルド人を支援した。アサドはモスクワへ亡命し、一応の終結の形はできた。
 現在の反政府勢力の主力はHTS(タハリール・アル・シャーム機構)という、かつてはヌスラ戦線とも呼ばれたテロ組織だ。なぜかアフガニスタンのタリバンを思い起こす。アフガンではアメリカ軍が撤退し、タリバンが自立した。残念なことは国内の混乱を鎮めることが出来ないことはおろか、ますます強権を強めている。女性に対しては教育の自由までも禁止してしまった。地域振興に貢献した故中村さんも無念であろう。
 焦点は、HTSが今後いかなる統治を行うかである。またシリア国内のロシア軍やロシア軍事基地の処遇である。いずれにしても民主的国家を設立してほしい。欲を言えば、反政府勢力として活動したクルド人の処遇を考えて欲しいことだ。シリア・トルコ・イラクが譲歩し、この3国にまたがって居住するクルド人に安住の地を与えるには、よい機会である。長らく紛争を繰り返し続けている中東は、頭を切り替えないといつまでも世界の民と離れない。他国の介入を許さない、真に自立した国になるべきだ。