帝国主義の時代に逆戻り

 19世紀後半は帝国主義の時代をひた走った。イギリス・フランス・ドイツ・ロシアなどのヨーロッパの国々が中心であったが、遅まきながらも唯一日本が追従した。帝国とは多民族を統治する政治体制と言える。当時のアメリカはモンロー主義の名残もあったが、地勢的にも国内の統治的にも侵略するには無理があった。その中で当時の大国であった前記4国はアジア・アフリカの分割に専念した。
 現在は、ロシアが露骨に牙を剥いてウクライナを侵略し、成功の暁には旧ソ連国に目を向けている。さらにイラン経由でのアフリカ進出を念頭に置いている。中国は中央アジアに進出したいところだがロシアとの関係で無理があるので、東南アジア・太平洋にさらにアフリカへと実績を上げている。アメリカは伝統的にロシアや中国のような侵略ではなく、影響力で各地に進出してきたが目立った動きはなかった。しかし、トランプ大統領になって、パナマ運河・グリーンランド・ウクライナ鉱物資源・南アフリカなどへの干渉など、他国を標的にしたアメリカ第一主義を打ち出した。他国に関与しないモンロー主義とは違う。
 ロシアは武力行使、中国は経済進出が強いが、アメリカは何を武器にするのであろうか。これまでは金融政策で世界を制してきたが、いつまでもそれはできないであろう。等しくいえることは3国とも、国内苦境を抱えていることだ。ロシアは経済低迷に加えて、政情不安定。中国は経済低迷と国民の窮乏。アメリカは国内混乱と産業の劣化。
 いずれにしても為政者は政治に苦労する状態だ。昔の帝国主義は〝great〟を目指す意識が強かったが、現在は〝国民を意識したポピュリズム〟に巻き込まれての帝国主義に突き進んでいる。