民主主義の根幹は国民の自由と平等を支えるものである。しかし今の世界はそれを揺るがす情勢だ。以前は資本主義と共産主義の確執で世界はある意味均衡を保ってきた。現在は民主主義と権威主義の確執の時代となった。中国・ロシアなどは権威主義の典型だ。では民主主義の典型はどの国なのだろうか。アメリカか、イギリスか、日本か?
確かなことは民主主義の小国は、権威主義の大国には勝てない。それを認めない人は今(将来)の世界が見えていない。言葉を換えれば〝平和ボケ〟している。その人たちは本来、純真で正しい人である。しかし、人間世界はその原理で動いていない。直近のウクライナやパレスチナ問題がそれを証明している。〝パックス……〟と言うのは世界史の中のつかの間の平和でしかない。この100年の間に世界は2度の大戦を現に行っているし、小競り合いは山ほど行われた。世界は侵略と反発の歴史を繰り返してきた。それは民族間の戦いのみならず、同じ民族間でも争ってきた。
自国を守るためには、最低限その能力を保持しなくてはならない。言葉に換えれば軍事力・経済力・外交力などである。それらが一つだけでは国の力にはならない。侵略を考える国に対しては、それに対して防衛する力が必要だ。侵略を考えるのと国を防衛するとの二択だ。侵略どうしでの攻防は戦争だ。防衛どうしでの攻防は冷戦だ。戦争はするべきではない。冷戦もするべきではないが、人間という動物は戦いを避けられないことは歴史と生物学が示している。世界は戦争に至らない冷戦の段階で耐えなければならない。その消極的な冷戦段階で支えるのが防衛力・経済力・同盟力だ。
世界は軍事的大国がことごとく権威主義的思考に傾いている。中国・ロシアのみならず、アメリカまでもその仲間入りをしようとしている。いまや政治的決断は即断即決を迫られる時代となった。それを容易にする権威主義に対して、民意→議会→政治のサイクルを繰り返す民主主義制度は目のくらむような時間を要する。しかし日本は民主主義を捨ててはならない。そのためには国力を養わなくてはならないし(抑止力)、政治のスムーズなシステムが必要だ。〝井の中の政治〟をいつまでも続けてはならない。