デフレ脱却に反するーーHOYU問題

 学校給食を提供しているホ-ユーが急遽、食事を提供しないで雲隠れ状態になった。これだけ聞くと、何と悪質な企業かという話で終わってしまう。確かに相談もなく提供を中止したことは問題ではある。企業は利益があって初めてサービスを提供できるものと考えれば、続ければ続けるほど赤字が膨らむ場合は倒産して逃げることも止むを得ない面もある。
 ウクライナ問題は、ロシアの食糧戦争にまで及んで世界的物価高を来たした。日本も例に漏れず石油から食品まで幅広く影響を受けて、物価の上昇が起きた。取引が年単位の価格で契約している場合、途中での価格変更は難しいのが一般的であり、特に日本は律儀に錦の御旗になっている。特に学校という特権意識の強い所は、児童・生徒・学生を人質に取り業者に圧力をかける。その結果、安価で引き受けざるを得ず物価高騰でも値上げはできない。このままの状態が続けば、参入する企業は無くなってしまうし、撤退する業者も出てくるだろう。被害者の気持ちは解るが損害賠償を求める意見も出ていることには、教育委員会の賢明な判断が求められる。教育現場の食の安全保障を、業者に丸投げし知らぬ顔をすることは教育ではない。
 数十年に及ぶ長いデフレで、経済は衰退した。当然、一定のインフレがないと停滞どころか衰退は進む。それは国民も十分経験した。政府も2%のインフレ目標を掲げてきた。しかし現実には今回のホーユー問題の様に、無条件で値上げを許さない体質が日本中に蔓延している。少しでも物価が上がれば、ただ文句を言うだけの国民になり下がった。所得と物価が上がらない限り経済は成長しない。ロシアのガス停止でEU諸国の物価は2倍3倍に高騰した。文句も言っているが我慢して耐えている。我慢強い日本人がいつの間にか取って変わられている。
 残念だが日本の中小企業には主導権を握れないシステムになっている。いわばバッファーとしてしか利用されない。日本の契約にも、中途での契約の見直しが可能な風土を導入すべきだ。このままでは中小企業はますます衰退してしまう。工夫・努力しない中小企業は淘汰されても当然だが、技術革新に小回りが利くのは中小企業であり、日本の繁栄を下支えしてきた。彼らに無力感を抱かせない風土を作り直さなければ、今後の発展は見込めない。