少子化問題--〔10〕将来への責任放棄(世代サイクルの崩壊)

 日本の年金制度は世界に誇れる制度だ。20歳から60歳を基本に、毎月16520円の納付をすれば老後毎月65000の給付を受けられる。国民年金基金や厚生年金などは納付額に応じた給付金が付加される。
 よく若者は「自分たちの掛金で老人を支えているが、自分たちが老人になったときは僅かしかもらえない」と不平を言う。制度を見れば分かるように、ある世代が先の世代への原資を積み立てるシステムだ。そして積み立ている世代は次の若い世代に原資を仰ぐことでになる。俗に言う〝輪廻〟システムだ。
 当然、積み立てる額が多いほど将来の受け取る額に対する補償が担保されるし、受け取る額も多くなる。つまり、過去自分たちの世代が積み立てた金を受け取っている訳だ。それは、今の若者も自身が積み立てた額で将来の老人としての受取額が決まる意味だ。
 不平ばかり言って、納付しないことは将来、自分に跳ね返ってくることぐらいは知っている筈だ。老人の不安は死や病だけではない。生活資金の問題も重大だ。若いうちは気付かないが仕事をリタイアした老人にとって、掛金を回収するウンヌンではなく、たとえ定額でも安定して収入となる年金は拠り所であることは事実だ。医療体制もコンセプトは類似の制度で、直接費用を軽減している。介護保険は老人自身も出資している。
 テーマの少子化問題だが、今の老人は4~5人の子孫を養い、彼らの出資で年金の恩恵を受けている。今の若者は1.5人の子孫の支援で老後を送らなくてはならない。マジックを使っても今の若者は老人のような恩恵は受けられない。仮に年金での恩恵を受けたとしても、他での犠牲は大きい。
 解決策がないわけではない。経済を成長させて豊かにすることだ。日本のような資源貧乏国は雇用を増やしてグローバル世界で生きるしかない。つまり、子孫を増やして産業を成長させることだ。国内のサービス業だけ発展させても、国は豊かにならない。活力のある若者が先ずは増加しなくてはスタートが切れない。それが出来れば若者も将来の不安が軽減され前進する。前進には世代間の連携が必要だ。